千葉家庭裁判所 平成11年(家)945号 審判 1999年12月06日
申立人 甲山X
主文
申立人の氏を「乙川」に変更することを許可する。
理由
1 申立ての要旨
申立人は、平成11年9月10日に丙谷Aと協議離婚して独り身となり、心細くなったので、申立人の氏を生来の氏である「乙川」に変更して、郷里である岩手県水沢市に帰郷し、親族と一緒に暮らし、「乙川」家の基に入りたく考えているので、申立人の氏を「乙川」に変更することを許可することの審判を求める。
2 当裁判所の判断
一件記録によると、次の事実が認められる。
(1) 申立人は、実母乙川Bの婚外子として昭和7年○月○日岩手県において出生し、昭和10年3月26日実母の姉であるCとその夫のDとの間で養子縁組を結び、D夫婦の養子となり、その後の昭和26年1月9日Eと婚姻したが、昭和36年8月18日協議離縁及び協議離婚をし、申立人の氏は、生来の氏である「乙川」となった。なお、その際、本籍を岩手県水沢市<以下省略>、筆頭者を申立人(乙川X)とする戸籍が編製された。
(2) 申立人は、昭和42年6月13日甲山Fと婚姻して「甲山」姓となり、そして、その後の昭和62年9月8日協議離婚したが、その際、戸籍法77条の2の届出をして婚氏である「甲山」姓を続称することとした。
(3) 申立人は、昭和63年10月11日丙谷Aと婚姻し、「丙谷」姓となったが、平成11年9月10日協議離婚して、申立人の氏は「甲山」姓に戻った。
(4) 申立人には、上記Eとの間に娘2人がいるが、右娘とは十年来行き来がなく、申立人は、現在、千葉県市原市内で侘しい独り暮らしをしているところ、申立人の郷里である岩手県水沢市の実家には実母の親族がいて、右親族とは親戚付き合いを継続してきており、将来は水沢市に帰郷し、死後は実家である乙川家の墓に入ることを希望し、そのために氏を生来の氏である「乙川」姓に変更されることを望んでいる。
以上の認定事実によれば、申立人は、昭和36年8月18日の離縁及び離婚により生来の氏である「乙川」姓となったが、その後甲山Fとの離婚に際して婚氏である「甲山」姓を称することを届け出た後、丙谷Aと再婚し、そして、同人との離婚により同人と婚姻する前の氏である「甲山」姓に復氏したものであり、したがって、本件は、離婚に際して婚氏を称することを届け出た者が婚姻前の氏と同じ呼称にしたい旨の申立てとは異なるが、生来の氏への変更を求めるものであるから、婚姻前の氏と同じ呼称に変更する場合に準じて、氏の変更申立てが濫用にわたるものでなく、特に弊害がなければ、これを認めても差し支えないものと解される。しかるところ、申立人が本件氏の変更許可を求める動機や事情には汲むべきものがあり、本件申立てが濫用にわたるものとはいえないし、また、申立人の氏が「乙川」姓に変更されることに特に弊害があるとは認められない。
よって、当裁判所は、本件申立てを相当と認め、主文のとおり審判する。
(家事審判官 千川原則雄)